飲食チェーン8事業場の受給額算定とコース選定
- 顧客像
- 飲食チェーン(静岡県・8事業場・約90名)
- 担当
- ワトナル社会保険労務士事務所
- テーマ
- 助成金・奨励金
課題
どの事業場で、どの引上げ額のコースを選べば費用対効果が最大になるか判断できなかった。
支援の内容
スキャンされた賃金台帳を全件データ化し、事業場ごとの助成上限額を算定。「最低賃金どおり」「70円」「90円」の各案を比較し、50円コースを軸に70円を対案として提示した。本店では勤怠・給与システムの設定代行を導入対象に設定。
成果・ポイント
全社の投資規模(約400万円を想定)と賃上げ額を、助成上限に合わせて組み立てた。
背景にある制度・ルール
業務改善助成金の助成額は、「設備投資等の費用×助成率」と「助成上限額」を比べて、いずれか安い方の金額になります。助成率は、引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4です。助成上限額は、コース(事業場内最低賃金の引上げ額)、引き上げる労働者数、事業場規模によって決まり、令和8年度の主な区分は次のとおりです(括弧内は事業場規模30人未満の事業者の上限額)。
- 50円コース:1人30万円(40万円)、2〜3人40万円(70万円)、4〜5人70万円、6〜7人90万円、8人以上110万円
- 70円コース:1人40万円(50万円)、2〜3人50万円(100万円)、4〜5人130万円、6〜7人180万円、8人以上230万円
- 90円コース:1人90万円(100万円)、2〜3人150万円(240万円)、4〜5人270万円、6〜7人360万円、8人以上450万円
10人以上の上限額区分(50円130万円、70円300万円、90円600万円)は、事業場内最低賃金が1,050円未満である事業者などの「特例事業者」が、10人以上の賃金を引き上げる場合に対象となります。
「引き上げる労働者数」には、事業場内最低賃金の労働者に加え、その引上げによって賃金額が追い抜かれる労働者も、申請コースと同額以上引き上げれば算入できます。一方、既に引上げ後の事業場内最低賃金以上の賃金を受けている労働者は算入できません。事業場内最低賃金は、最低賃金法第4条と同法施行規則に基づいて算定し、精皆勤手当・通勤手当・家族手当は除外します。助成の対象は「生産性向上・労働能率の増進に資する」設備投資等で、汎用的な事務機器や単なる経費削減を目的とするものなどは対象外とされています。
支援のポイント
本件では、スキャンされた賃金台帳を全件データ化し、事業場ごとの助成上限額を算定しました。上限額は事業場ごとに「誰が事業場内最低賃金で、誰が追い抜かれるか」によって決まるため、紙や画像のままでは人数区分の判定や案の比較ができません。8事業場・約90名分を数値として扱える形にしたことが、以降の検討の土台になりました。
そのうえで、「最低賃金どおり」「70円」「90円」の各案を比較し、50円コースを軸に、70円を対案として提示しました。コースを上げると上限額は大きくなりますが、引き上げる額と人数が増え、毎月の人件費の負担も増えます。また、上限額まで助成を受けるには、それに見合う設備投資額が必要です。助成額の大きさだけでなく、賃上げ後の人件費と投資額のバランスを事業場ごとに見比べることで、費用対効果を判断できるようにしました。
本店では、勤怠・給与システムの設定代行を導入対象に設定しました。助成の対象になるのは生産性向上に資する設備投資等であるため、どの業務の時間がどれだけ短くなるのかを説明できる投資を選ぶことが大切です。
こうした積み上げにより、全社の投資規模(約400万円を想定)と賃上げ額を、助成上限に合わせて組み立てました。
同じような課題をお持ちの方へ
- 賃金台帳は、事業場ごと・労働者ごとに時間額へ換算できる形で整理しましょう。月給者は、月給を月の所定労働時間で割って時間額にします。
- コースを選ぶ前に、「引き上げる労働者数」に算入できる人を事業場ごとに確認しましょう。
- 上限額いっぱいの助成を受けるには、おおむね「上限額÷助成率」に相当する設備投資額が必要です。投資額が小さければ、助成額もそれに応じて小さくなります。
- 賃上げはその後も続く固定費になります。翌年度以降の人件費も含めて判断しましょう。
- 設備投資は「どの作業が何時間短くなるか」を説明できるものを選び、見積りは同じ仕様で二者以上から取りましょう。
助成金は、投資と賃上げを後押しするための制度です。助成額の大きさだけで決めず、事業の計画に合った規模を選ぶことが大切です。
参考資料
- 業務改善助成金:中小企業・小規模事業者の生産性向上のための取組を支援(厚生労働省・2026年10月28日確認)
- 令和8年度業務改善助成金のご案内(リーフレット)(厚生労働省・2026年10月28日確認)
- 令和8年度業務改善助成金の一部変更のお知らせ(厚生労働省・2026年10月28日確認)
- 業務改善助成金Q&A(令和8年9月~)(厚生労働省・2026年10月28日確認)
※守秘義務に配慮し、ご承諾をいただいたうえで、業種・地域・規模などを匿名化して掲載しています。
