CASE

事例紹介

東京都カスハラ防止奨励金 ― 124社の申請を一元管理

顧客像
東京都内の中小企業(業種横断)
担当
ワトナル社会保険労務士事務所
テーマ
助成金・奨励金

課題

要件である基本方針・対応マニュアル・録音機器の社外周知を、短期間で各社分そろえる必要があった。

支援の内容

申請回をまたいで124社を管理台帳で一元管理。各社の基本方針・マニュアル・社外周知文の3点を作成し、「機器購入→書類作成→周知」の標準手順を整えた。社内用に56項目の申請前チェックリストも作成。

成果・ポイント

多数社の申請を同じ品質で回す運用を確立。

背景にある制度・ルール

東京都では、令和7年4月1日に「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」が施行されました。条例は、顧客等から就業者に対し、その業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、就業環境を害するものを「カスタマー・ハラスメント」と定義し(第2条)、何人も、あらゆる場においてカスタマー・ハラスメントを行ってはならないと定めています(第4条)。

事業者に対しては、防止に主体的かつ積極的に取り組むこと、被害を受けた就業者の安全を確保し、行為者に中止を申し入れるなど必要な措置を講ずること(第9条)、都の指針に基づき、必要な体制の整備や、防止のための手引(マニュアル)の作成などに努めること(第14条)が定められています。いずれも努力義務です。

都の「カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン)」は、事業者の取組の最初に「基本方針・基本姿勢の明確化と周知」を挙げ、基本方針を就業者だけでなく外部にも周知することで、事業者の姿勢が顧客等に対しても明確になるとしています。あわせて、相談窓口の設置、現場での初期対応の手順づくり、事実関係の確認(録音・録画の活用を含む)、就業者への教育・研修などが例示されています。

条例の浸透を後押しするため、都は中小企業等(常時雇用する従業員300人以下)向けに、定額40万円の奨励金を設けています。都の公表資料では、条例施行日以降の取組が対象で、カスタマーハラスメント対策マニュアルの作成を必須とし、加えて「録音・録画環境の整備」「AIを活用したシステム等の導入」「外部人材の活用」のいずれか一つを実施することが要件とされています。令和8年度は事前エントリー制がとられ、募集規模を超えた場合は抽選となる方式です。細かな要件や提出書類は募集回ごとの募集要項で定められるため、回ごとの確認が欠かせません。

支援のポイント

本件では、申請回をまたいで124社を管理台帳で一元管理しました。奨励金は募集回ごとに受付期間や手続が設けられるため、会社ごとに「どの回に申請するか」「どの書類がどこまで進んでいるか」を一か所で確認できる状態にしておかないと、期限の見落としや書類の取り違えが起こりやすくなります。進捗を台帳に集約したのはそのためです。

各社には、基本方針・対応マニュアル・社外周知文の3点を作成しました。基本方針は会社としての姿勢を示すもの、マニュアルは現場での具体的な対応手順を定めるもの、社外周知文は録音機器の使用などを顧客等に知らせるもの、と役割が異なります。指針でも方針の外部への周知が重視されており、3点をそろえることで、要件を満たすだけでなく、現場で実際に使える対策になるよう配慮しました。

また、「機器購入→書類作成→周知」という標準手順を整えました。マニュアルや周知文には、実際に導入した録音機器の運用を反映させる必要があります。機器の導入を先に済ませてから書類を作り、最後に周知するという順番にしておけば、記載内容と実態の食い違いを防げます。多数の会社を同時に進める場合、この順番を全社共通にしておくことが、品質をそろえる近道になります。

さらに、社内用に56項目の申請前チェックリストを作成しました。担当者が変わっても同じ観点で確認できるようにすることで、多数社の申請を同じ品質で回す運用につなげています。

同じような課題をお持ちの方へ

  • カスハラ対策の基本方針を経営トップの名前で定め、従業員と顧客等の双方に伝える方法(店頭掲示、ウェブサイトなど)を決めましょう。
  • 対応マニュアルはひな形をそのまま使わず、自社の業種や接客の場面(店頭、電話、訪問など)に合わせて、初期対応、社内への報告ルート、警察や弁護士との連携の判断基準を書き込みましょう。
  • 録音・録画を行う場合は、記録の保存期間や閲覧できる人の範囲など、取扱いのルールもあわせて決めておくと安心です。
  • 相談窓口を決め、相談したことを理由に不利益な取扱いをしないことも社内に周知しましょう。
  • 奨励金を検討する場合は、募集回ごとの募集要項で要件・対象期間・提出書類を確認し、取組の日付が分かる記録(購入の領収書、周知を始めた日など)を残しておきましょう。

奨励金は予算や募集規模の範囲で実施されるため、要件を満たしても受給できるとは限りません。制度の活用とあわせて、働く人を守る仕組みとして社内に定着させることを目指しましょう。

参考資料

※守秘義務に配慮し、ご承諾をいただいたうえで、業種・地域・規模などを匿名化して掲載しています。