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本店移転の登記 ─ 管轄内と管轄外で何が違う?

会社の本店を移転したときは、2週間以内に本店移転の登記を申請する必要があります(会社法第915条第1項、第916条)。移転先が同じ法務局(登記所)の管轄内か、別の法務局の管轄かによって、申請の方法と費用が変わります。また、移転先によっては定款の変更も必要です。この記事では、本店移転の登記の基本と、手続きの流れ、注意点を解説します。

まずは移転先の「管轄」を確認する

会社の登記は、本店の所在地を管轄する登記所で扱われます。管轄は地域ごとに決まっており、同じ都道府県内の移転でも管轄が変わることがあります。移転前と移転先の住所がそれぞれどの法務局の管轄になるかは、法務局ホームページの「管轄のご案内」で確認できます。

管轄内の移転

移転前と同じ登記所の管轄内であれば、申請は1件で済みます。本店移転の登記の登録免許税は、国税庁の税額表で1か所につき3万円とされており、管轄内の移転では3万円となります。

管轄外の移転

別の登記所の管轄に移る場合は、旧所在地では移転の登記を、新所在地では会社の登記事項を改めて登記する必要があります(会社法第916条)。新所在地での登記の申請は、旧所在地を管轄する登記所を経由して行い、旧所在地での登記の申請と同時にしなければなりません(商業登記法第51条)。つまり、旧所在地あて・新所在地あての2通の申請書を、旧所在地を管轄する法務局へまとめて提出することになります。登録免許税は旧所在地分・新所在地分のそれぞれに3万円がかかるため、合計6万円です。

印鑑の取扱いが変わりました

以前は、管轄外へ移転する際に新所在地の登記所へ印鑑届書を提出する必要がありましたが、令和7年4月21日からは、旧所在地の登記所が印鑑の記録を新所在地の登記所へ移送する取扱いとなり、印鑑届書の提出は不要になりました。ただし、印鑑カードは引き継がれません。印鑑証明書が必要な場合は、登記の完了後に、新所在地を管轄する登記所あてに改めて印鑑カードを請求します。移転にあわせて改印したい場合は、移転登記の申請の前または同時に旧所在地の登記所へ、あるいは移転登記の完了後に新所在地の登記所へ改印届書を提出します。

定款の変更が必要か確認を

本店の所在地は、定款に必ず記載すべき事項です(会社法第27条第3号)。定款に本店所在地を「東京都豊島区」のように最小行政区画まで記載している場合、同じ区画内での移転であれば定款変更は不要です。区画の外へ移る場合は、株主総会の特別決議による定款変更が必要になります(会社法第466条、第309条第2項第11号)。定款に番地まで記載している場合は、同じ区画内の移転でも定款の変更が必要です。

定款の範囲内で具体的な所在場所と移転日を決める方法は、会社の機関設計によって異なります。取締役会を置く会社では、取締役会で決定するのが一般的です。

手続きの流れ

  1. 移転先と移転日を検討し、移転先の管轄を確認する
  2. 定款の本店所在地の記載を確認し、必要であれば株主総会で定款を変更する
  3. 取締役会などで、具体的な所在場所と移転日を決定する
  4. 実際に移転する
  5. 2週間以内に登記を申請する(管轄外の場合は、旧所在地の法務局に2通を同時に提出)
  6. 登記の完了後、登記事項証明書を取得し、管轄外の場合は印鑑カードを請求する

移転のスケジュールを考えるときのポイント

  • 登記の期限から逆算する:移転してから2週間以内に申請できるよう、定款変更の株主総会や取締役会の日程、必要書類の準備を前もって進めておきましょう
  • 登記の完了までの期間を見込む:登記が完了するまでは、新しい本店所在地が記載された登記事項証明書を取得できません。金融機関や取引先での住所変更の手続きに証明書が必要な場合は、その時期も考慮します
  • 移転先の物件を確認する:賃貸物件の場合、本店として登記することが契約上認められているかを事前に確認しておくと安心です

よくある注意点

  • 移転日の考え方:登記するのは実際に本店を移転した日です。決議の日と移転の日が異なる場合は、取り違えに注意しましょう
  • 同じ商号の会社:移転先の所在場所に、同じ商号の会社がすでに登記されている場合は、登記をすることができません(商業登記法第27条)
  • 住所非表示措置:令和6年10月から始まった代表取締役等住所非表示措置は、本店移転先での登記の際にも申出ができるとされています。ただし、融資などの場面で必要な書類が増える可能性もあるため、事前の検討が必要です
  • 関係先への届出:許認可を受けている場合の変更の届出、金融機関・取引先への通知、税務署などへの届出も必要になります

本店移転にあわせて、社会保険・労働保険の所在地変更の届出も必要です。ワトナル司法書士事務所では、定款変更の要否の確認から、株主総会議事録などの書類の準備、登記の申請までお手伝いしています。社会保険・労働保険の手続きは、グループのワトナル社会保険労務士事務所と連携して対応いたします。

参考資料