CASE

事例紹介

製造委託基本契約の条項確認(受託者側)

顧客像
電子基板実装業(受託者側)
担当
ワトナル司法書士事務所
テーマ
契約書・約款

課題

大手の発注者から示された契約案で、受託者側のリスクが構造的に偏っていた。

支援の内容

全条項を確認し、29件のコメントを該当条文に付記。各コメントに重要度・根拠・修正文案を記載し、優先度の高い5論点(損害賠償の上限がない、最終納入後5年の供給義務、知的財産の無償譲渡の範囲、取適法の支払期日の基準、解除の要件)を整理した。

成果・ポイント

コメントがそのまま先方への修正申入れのたたき台になる形で納品。

背景にある制度・ルール

取適法(旧・下請法)

2026年(令和8年)1月1日、下請代金支払遅延等防止法(下請法)が改正され、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(略称:中小受託取引適正化法、通称:取適法)として施行されました。法律の中の呼び方も「委託事業者」「中小受託事業者」に改められています。

取適法が適用されるかどうかは、取引の内容と、当事者の資本金の額または常時使用する従業員の数で決まります。たとえば製造委託では、資本金3億円を超える法人が個人または資本金3億円以下の法人に委託する場合のほか、常時使用する従業員が300人を超える法人が300人以下の事業者に委託する場合なども対象になります(第2条)。主なルールは次のとおりです。

  • 支払期日:検査をするかどうかを問わず、給付を受領した日から起算して60日以内、かつ、できる限り短い期間内で定めなければなりません(第3条)。
  • 不当な経済上の利益の提供要請の禁止:自己のために金銭や役務その他の経済上の利益を提供させ、中小受託事業者の利益を不当に害することは禁止されています(第5条第2項第2号)。公正取引委員会の運用基準では、給付の内容に含まれない知的財産権を無償で譲渡・許諾させることはこれにあたるとされ、量産終了後に型を無償で保管させる例も示されています。
  • 一方的な代金決定の禁止:中小受託事業者から代金の協議を求められたのに応じず、一方的に代金を決めることも禁止されています(第5条第2項第4号)。

民法の基本ルール

契約に定めがない場合、損害賠償の範囲は、債務不履行によって通常生ずべき損害と、当事者が予見すべきであった特別の事情による損害とされています(民法第416条)。また、解除については、催告による解除(第541条)と催告によらない解除(第542条)の要件が定められています。契約書はこれらを前提に、上限や要件を具体的に定めるものです。

支援のポイント

全条項を確認し、29件のコメントを付記

契約案の全条項を確認し、29件のコメントを該当する条文に付記しました。各コメントには、重要度・根拠・修正文案を記載しています。指摘を条文のそばに置き、根拠と具体的な修正文案までそろえることで、読み手が「どこを、なぜ、どう直したいのか」をすぐに理解できる形にしました。

優先度の高い5つの論点

  1. 損害賠償の上限がない:上限の定めがないと、取引額に比べて過大な賠償を負うおそれがあります。
  2. 最終納入後5年の供給義務:量産が終わった後も長く供給を続ける義務は、部品の確保や保管などの負担につながります。
  3. 知的財産の無償譲渡の範囲:どこまでの知的財産が対価なく譲渡の対象になるのかを確認する必要があります。
  4. 取適法の支払期日の基準:支払期日が受領日を基準に60日以内に収まるかを確認します。
  5. 解除の要件:どのような場合に解除されうるのか、要件が明確で一方に偏っていないかを確認します。

29件すべてを同じ重さで扱うのではなく、優先度の高い論点を絞り込んだことで、限られた時間の中でも重要な点から検討できるようにしました。

修正申入れのたたき台として使える形で納品

コメントは、そのまま先方への修正申入れのたたき台になる形で納品しました。この事例での役割は条項確認と修正文案の作成であり、お客様が社内での検討や先方とのやり取りにそのまま使えることを重視しています。

同じような課題をお持ちの方へ

  • 取適法の対象かを確認する:取引の種類と、双方の資本金・従業員数を確認します。
  • お金に関わる条項から読む:代金、支払期日、支払方法、損害賠償、費用負担の条項を優先して確認します。
  • 義務がいつまで続くかを確認する:供給義務、保証、秘密保持など、契約終了後も続く義務の期間を確認します。
  • 知的財産の帰属を確認する:自社がもともと持っている技術やノウハウまで対象になっていないかを確認します。
  • 修正の希望は根拠とセットで:法律や取引の実情にもとづく理由を添えると、相手方も検討しやすくなります。

契約書の条項確認・修正文案の作成(紛争性のないものに限ります)は、グループのワトナル行政書士事務所(行政書士 杉山 貴啓・東京都行政書士会 第23080968号)がお受けしています。

参考資料

※守秘義務に配慮し、ご承諾をいただいたうえで、業種・地域・規模などを匿名化して掲載しています。